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横浜地方裁判所小田原支部 昭和45年(手ワ)32号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、申立

一、原告 「被告は原告に対し金一〇〇万円およびこれに対する本訴状送達の翌日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決と仮執行の宣言

二、被告 主文同旨の判決

第二、原告の主張

一、被告は、訴外中田角一を受取人とする別紙手形目録記載の約束手形(本件手形という)を振り出し交付した。

二、原告は、かつて第一裏書人中田角一、同被裏書人欄白地の裏書記載のある本件手形を所持していたが、支払期日後に芝信用金庫桜新町支店から、前記裏書記載のほか、さらに原告(但し税務対策上の名称である中山進の名義)より芝信用金庫桜新町支店への、同金庫支店より住友銀行都立大学駅前支店への、同銀行支店より日本勧業銀行への各裏書(後二個は取立委任)の記載ある本件手形の返還を受け現にその所持人である。

三、被告の主張三のうち、原告が支払期日後に第一裏書の被裏書人欄表示を抹消したことは認めるがその余は争う。

四、第一裏書人中田角一が被裏書人欄にあつた「富士宮信用金庫」の表示を訂正せずに北海商事有限会社に裏書交付して、黙示に右被裏書人欄の訂正権を授与したが、原告は後記五のとおり、北海商事有限会社、菱光石油株式会社、大邦石油株式会社を経て、本件手形上の権利を取得するに伴い右被裏書人欄訂正権を取得したので、この訂正権に基き、本件手形第一裏書の被裏書人欄表示を抹消したものである。

五、仮りに、裏書の連続が欠けているとしても、原告は、本件手形の受取人中田角一から次の経過で本件手形上の権利を取得した。即ち、中田角一は、富士宮信用金庫に本件手形を裏書交付し、その後返還を受けたが、昭和四五年一月二三日に北海商事有限会社に本件手形を前記訂正権を授与して裏書交付した。北海商事有限会社は、菱光石油株式会社に、同株式会社は更に大邦石油株式会社にいずれも昭和四五年一月二三日被裏書人欄の訂正権の付された本件手形を交付して、手形上の権利を譲渡した。原告は、大邦石油株式会社の専務取締役であるが、同会社に対する貸金債権の弁済として本件手形の交付を受け、その権利を取得した。若しくは、原告は、菱光石油株式会社から直接本件手形の交付を受けてその権利を取得した。

六、被告の主張六は否認する。

七、そこで、原告は、被告に対し手形金一〇〇万円およびこれに対する本訴状送達による支払催告をした日の翌日から支払済まで商事法定利率年六分による遅延損害金の支払を求める。

第二、被告の主張

一、原告の主張一を認める。

二、同二のうち、第一裏書の裏書人欄に中田角一の氏名印の記載表示のあることは認めるが、その余は争う。なお、第一裏書の被裏書人欄表示が抹消されているから、第一裏書全体が抹消されていると評価しなければならない。

三、仮りに、被裏書人欄表示の抹消が裏書全体の抹消でないとしても、第一裏書被裏書人欄表示の抹消は、原告が本件支払期日後に無権限でなしたものである。従つて、右抹消前の第一裏書の被裏書人が「富士宮信用金庫」であるのに、第二裏書人が中山進であるのは、裏書の連続を欠いている。

四、原告の主張四を否認する。

五、同五のうち、中田角一が富士宮信用金庫に本件手形を裏書し、後に返還を受けたことは認めるが、その余は争う。

六、仮に、原告が本件手形の取得者であるとしても、次のとおり被告にはその支払義務がない。被告は、中田角一に対し中田から買い受ける砂利、砂の前渡金の支払のために本件手形を振り出し、中田は富士宮信用金庫で本件手形の割引を受けた。しかし、被告は、中田が被告に砂利砂を供給しないので、中田と砂利砂の取引契約を合意解除し、中田は、被告に本件手形を富士宮信用金庫から取戻して返還することを約した。従つて、被告は、中田との間では、本件手形の支払義務を負わないが、昭和四五年一月二三日頃本件手形を所持した松原なる者が被告方を訪れ、支払意思を問合わせたので、事情を説明して支払意思も義務もないことを通告した。その後の手形取得者である原告は、右事情を知っているもので、悪意の取得者である。原告に対しても支払義務を負わない。

七、原告の主張七は争う。

第四、立証(省略)

別紙

手形目録

1. 額面金額 金一〇〇万円

2. 支払期日 昭和四五年三月一五日

3. 支払地  平〓市

4. 支払場所 株式会社日本勧業銀行平〓支店

5. 振出日  昭和四四年一一月一日

6. 振出地  平〓市

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